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1.バイオマスってなに?
バイオマスとは、「バイオ」(生物) と 「マス」(まとまった量)を合わせた造語です。
「再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されています。
例えば石油など化石資源は、枯れた植物など堆積しできた燃料であり、生物由来の有機性資源であることには変わりませんが、何万年もかかってできたものであり、一度使ってしまうと再生に同じくらいの時間がかかってしまうことから、このような化石資源はバイオマスではないとされています。
2.バイオマスの分類
バイオマスは、とにかく身近なものばかりです。
家庭からでる「生ごみ」、コンビニの期限切れの弁当やレストランの残飯などの「食品廃棄物」、庭や公園で発生する「木くずや草」、製材所や木造住宅の解体で発生する廃木材などの「木くず」、牛ふんや豚ふんなどの「家畜ふん尿」や下水を処理した後の残渣である「下水汚泥」、これらは、生活や事業活動に伴って発生した廃棄物であることから「廃棄物系バイオマス」と呼ばれています。
また、集めても使い道がない、売れないなどの理由で未利用状態にある「稲わら」、「麦稈(ばっかん)」や「籾殻(もみがら)」は、「未利用バイオマス」と呼ばれています。
さらに、エネルギーにすることを目的に栽培される「菜の花」や「トウモロコシ」は、「資源作物」と呼ばれています。
日本では、廃棄物系バイオマスの量が最も多く、その利活用の普及が求められています。欧州に比べて国土が狭い日本では、資源作物の割合は小さく、食料との競合が問題視されており、非食用部分の利用や、ヤナギなどの食用ではない作物の利用の検討が行われています。
3.どのようにバイオマスは利用できるのか
バイオマスの利用方法は様々なものがあり、簡単に全てを説明することはできません。ここでは、ごく身近な利用方法を分かりやすく説明したいと思います。
(1)生ごみや食品廃棄物の堆肥化
家庭から排出された生ごみは分別して回収されると、畑の土壌改良材や肥料成分として利用できる堆肥を作ることができます。美味しい野菜を作るために、必要な良い土をつくるのに役立ちます。そのような良い畑でとれた、美味しい野菜をまた、私たちは食べることができます。
堆肥は、「コンポスト反応」と呼ばれるように、「微生物」が、空気中の「酸素」を使って、有機物を分解する反応を用いて作られます。
生ごみの他に、牛ふん、豚ふんや下水汚泥を用いて作られた堆肥があります。
酸素が嫌いな微生物もいます。空気を遮断した容器内に、生ごみや牛ふんを入れ、温度を35~37度にしておくと、嫌気性微生物の働きによりバイオガスが発生します。バイオガスの主成分は、メタンと二酸化炭素であり、メタンは天然ガスの主成分なので、電気や熱などのエネルギーに変換できます。同時に、反応が終わった残りの残渣は、肥料として畑に使用することもできます。エネルギーと液肥ができる、一石二鳥の方法です。
生ごみや牛ふんは、毎日発生します。それから、バイオガスが全て出尽くすまでに30日~90日間かかると言われています。従って、太陽光や風力と異なって、バイオガスを利用すると、一年中、24時間、安定した電力を得ることができます。
また、スウェーデンでは、バイオガスを燃料としたバスが運行していたり、バイオガスは、天然ガスの代わりに燃やすと給湯や暖房にも利用できます。このように、バイオマスは、電気だけでなく、熱や自動車燃料としても利用することができるのが大きな特徴です。
(3)林地残材や稲わらの燃料利用
森林で木が伐採されても、全ての部位が製材されるわけではありません。細い枝葉は利用されません。また、森林管理で、木の間引きが良く行われますが、間引かれた木も利用されていません。このような林地残材を集めて、チップやペレットにして、燃やすことにより、暖房に利用することができます。欧州では、地域毎に分散して電気・熱を供給するプラントがありますので、そこで、大量の木質チップが使われています。また、稲わらですが、以前は、野焼きされ、畑に還元されていましたが、野焼きが法律上禁止されてからは、そのまま鋤込むことが多くなりました。土壌の状態によっては、稲の成長阻害やお米の食味に悪影響を及ぼすことがあることから、集めて、ペレット化して、暖房用に利用するという試みもされています。
とにかく自然豊かな北海道はバイオマスの宝庫です。
家畜ふん尿、木質バイオマス、農産資源(稲わらなどの農業残渣)の占める北海道のシェアは大きく、これらの有効利用が、条例でも求められています。
バイオマスは、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーの内の一つです。自然エネルギーやクリーンエネルギーとも言われています。それは、化石燃料とは違い、エネルギーを消費しても二酸化炭素を大気中に排出しないからです。
えっ?バイオマスは燃焼すると二酸化炭素が発生しますよね。でもご安心を。例えば、植物は、降り注ぐ太陽光により、光合成により、大気中の二酸化炭素を有機物に変換し、自身の体にして、成長します。このように成長した植物は燃やしても、その植物の燃焼によって排出される二酸化炭素は、元々大気中にあった二酸化炭素なので、正味は増えないのです。この性質のことをカーボンニュートラルと言います。
バイオマスが環境に優しい理由は、このカーボンニュートラルにあるとされています。一方、石油などの化石資源は、これまで数万年地下に眠っていた有機物を、ここ150年ぐらいの間にいっぺんに燃やしてしまっています。その過程で排出される二酸化炭素は、もともと地下にあったものですから、大気中の二酸化炭素の増加につながってしまうのです。
6.バイオマスのエネルギー利用のメリット
1)処理しなければならない(身近な)廃棄物をエネルギーとして利用できる。
2)再生可能エネルギーであり、カーボンニュートラルの性質があるので、地球温暖化への対策となる。
3)自律分散型エネルギーとして利用でき、災害時にも自前でエネルギーを得ることができる。
4)地産地消なので、これまで外部に支払っていた化石燃料費の一部を、地域内に向けることができるので、地域経済を活性化する。
5)電気だけではなく、熱や自動車燃料としても利用できる。電気として使うよりも効率が良い。
いかがでしょうか?バイオマスのこと、分かっていただけたでしょうか?